最果ての地にて愛をつなぐ ③

小説 最果ての地にて愛をつなぐ

架空の物語3記事目です。

物語の内容
コロナ騒動がきっかけでで仕事を辞めた若い女性が主人公の物語。
主人公の梢は19歳で社会人2年目。
今の世の中の状況に疑問を持ちながら、
堂々と言えるほどの勇気はない。
その状況から自分の感覚に従って行動し、一人旅をきっかけに
世間の状況とは違う生き方をする人々との出会っていく。
そこからの影響も受けながら自分の生き方を見つけていく。

小説の本文はこちらからです。

回想 2019年冬

仕事を変えて数日で、梢は今度の仕事場は自分に合っていると感じた。
その感覚は、数ヶ月経っても変わらなかった。
このカフェは、梢の両親より少し年上の60代の夫婦の経営。29歳になる娘さんもスタッフとしてここを手伝っている。
マスターとママは若い頃音楽をやっていて、同じバンドのメンバーだったらしい。
二人とも愛想が良く、お客さんからも人気があった。
夫婦仲も良くて、このカフェの仕事を二人が楽しんでやっているのが伝わってくる。
娘さんの唯さんは梢より10歳年上だったけれど、見た目はもっと若くまだ学生のように見えた。
色白で、ストレートの長い黒髪を綺麗に編み込みにしている。
目も鼻も口も顔のパーツが全部小さ目で、スッキリと整った顔立ちは母親似だった。
京美人というのはこういう人の事かと梢は思う。
マスターは彫が深い顔立ちで色が黒く、外見的にはママや唯さんとは対照的だった。

梢は、身長160センチの唯さんより5センチ位背が低い。
小柄で童顔。クルクルと良く動く丸い目をしていて、ショートカットの髪を少し明るい色に染めている。
もうすぐ20歳になる年齢よりも幼く見られて、高校生に間違われる事はよくあった。
それでもここの家族には「可愛い」と褒めてもらえてうれしいと思っている。
今は特に付き合っている人もいないので彼氏募集中だ。

このカフェは基本家族経営の店で、バイトで入っているのは梢一人だけだった。
マスターもママも見た目通り明るく穏やかな人柄。唯さんも優しくて気さくで、それでいてしっかり者で頼れる人だ。
前の会社での煩わしい人間関係に疲れていた梢には、それが何より嬉しかった。
毎日朝10時から店を開けて、夜の9時まで営業。
梢が入るのは夕方の6時半まで。間に30分の休憩もあった。
平日休みの基本週6勤務で、一ヶ月の手取りは15万円前後。
まかない付きで食費が節約できるし、特に高価な物を欲しがる欲望もない梢の生活費としては十分な額だった。

この店は、8人座れるカウンターと4人座れるボックス席が3つ。珈琲や抹茶を中心に、甘い物や軽食のパンメニューもある。
土産物の陶器のコーヒーカップや皿、小物なども売っていて、カフェのメニューで出しているお菓子も売っていた。
季節ごとの店内の飾りつけ、メニューの変更なども一緒に考えさせてもらえたので、そういう事が大好きな梢は仕事に行くのが楽しみだった。
服装の規定はなかったけれど、何となく店の雰囲気に合う物を選んで着る。それもまた楽しみの一つだ。

京都は盆地独特の蒸し暑さで真夏は厳しい。
そんな暑い時期の7月に勤め始めて、やがて秋を迎え、冬を迎えた。
店のメニューも仕事内容もすっかり覚え、三人とは仕事以外でもよく一緒に過ごした。
常連のお客さん達とも親しくなっていった。
勤めだして半年経った時、ここで楽しくやっている事をラインで親に伝えたら安心してくれた。
知り合いの居ない京都で見つけた、自分の居場所。

梢は、出来るならずっとここで働きたいと思っていた。

続きはこちらです。

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