ビジネス書として読むキングダム8巻
人生を変える出会い
嬴政を救った紫夏との出会い
嬴政を救った闇商人紫夏。
キングダムの物語全体の中でも特に印象に残る、
悲しくも感動的なエピソードの一つ。
嬴政は、九歳になるまで趙国で人質として暮らしていた。
長平の戦いで、秦国の将軍白起は、
投降してきた趙軍の兵士四十万人を生き埋めにした。
その恨みは、
趙国に残された政とその母親に向けられる。
政の父親の子楚を呂不韋が趙国から脱出させた時、
妻と子供は置き去りにされていた。
元々は呂不韋と恋人同士の関係にあり、
子楚との間は望んだものではなく
呂不韋に利用された事、政が生まれた事で
自分も酷い生活を強いられた事などがあり、
母親も政につらくあたる。
一歩外へ出れば趙国の民からの激しい虐待の連続で、
政はいつしか五感を失っていった。
九歳になるまでの間に、暑さ寒さの感覚、
味覚、嗅覚、痛みの感覚など全てが
働かない体になってしまう。
そんな生活を送っていた政を救ったのが、
闇商人紫夏だった。
子楚を脱出させた時と同じように、
今度は政を趙国から脱出させる計画が始まる。
それを助けたのが
闇商人の女頭目紫夏と二人の仲間。
秦国へ向かう途中でこの計画が
趙国側にバレる。
追ってきた趙国の軍によって、
この秘密の計画を実行するために
秦国から来た道剣と配下の者も、
紫夏と仲間二人も、全員が命を落としてしまう。
それでも、紫夏が手を差し伸べたことで、
政は失っていた体の感覚を取り戻した。
紫夏は、
人に抱きしめられた事もなかった政の体を
抱きしめて、力強い言葉をかける。
それをきっかけに、政の失われていた感覚全てが
正常に戻っていく。
もしそれが無かったら、
たとえ全員が命を懸けて政を秦国に
送り届けたとしても、政は心も体も壊れた
廃人になっていたかもしれない。
もしそうなら、とても秦国の王になれるような
人物だったとは言えない。
たった一人の人物との出会いが
人生を大きく変えることは、
今の実社会でも珍しいことではない。
実社会に置き換えても、
それまで環境に恵まれていなかった人が、
ある一人の人物との出会いによって
能力を発揮するようになることがある。
経営者や、会社で人の上に立つ役職の人の場合、
自分が誰かの能力を見出し発揮させる側にもなれる。
受け継がれる思い
紫夏が、危険な仕事だと分かっていながら、
政の脱出に関わろうと決めたのには理由があった。
紫夏は幼い頃、
赤の他人である養父に命懸けで助けられた経験がある。
その人は、また別の人を助けようとして
命を落としたが、最後に紫夏に対して言葉を残した。
受けた恩に対して自分は何一つ
返せていないと言う紫夏に対してその人は
「恩恵は全て次の者へ」と告げる。
「どんな些細な事でもいい。受けた恩恵を次の者へ」
自分もまた人に助けられてきたから、
その恩恵を紫夏達に注いだ。
だから今度はそれを次の誰かに注いで欲しいと言い残した。
十歳にも満たない子供の政が、
誰にも手を差し伸べられる事なく、
敵国の趙で虐待を受け続け、体の感覚を失うまで
追い詰められている。
それを見た時に、
自分が人から受けた恩を次の者に注いでいく機会が、
今こそ訪れた
そう思ったに違いない。
そして実際に紫夏は、
自分が養父から命懸けで助けられたように、
今度は自分の命を懸けて政を守りきった。
今の世の中にある仕事の上では、
ここまで危険な事や命懸けで成し遂げる事は
滅多にないかもしれない。
今に置き換えるなら、
誰かから受けた恩を受けた時。
その時の自分はまだ未熟で恩を受けた相手が
生きているうちに返せなかったとしても、
その恩恵を次の誰かに注ぐ事は出来る。
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