隊の絆
二つの見どころがある44巻。
敵軍が押し寄せる前の短い時間に
趙軍総大将慶舎を討つ。
これを成し遂げる飛信隊の活躍。
凌辱も略奪もありな桓騎軍との、
戦い方の違いに黙っていられない信。
同じ秦国軍の味方同士の中で
争いになりそうな不穏な状況。
それがとりあえずは収まるまでの顛末。
組織の中での考え方の違いや争いは
現代でもあるので、そういうところも
自分の身の回りに起きる事に重ねて
読める人もいると思う。
飛信隊が何を目指しているかについて
信が語る場面も印象的。
飛信隊の働き
趙軍総大将を討つ
桓騎の策にはまって、丘の下に出てしまった慶舎。
慶舎を討つなら今しかない。
飛信隊にとっては、時間がかかれば敵軍が押し寄せ、
こちらもひとたまりもないという場面。
貂の指揮で、信を慶舎のところまで行かせるために
それを援護する隊員達。
その働きもあって、ついに信が慶舎の目の前まで迫る。
見た目からは想像できない武の力を持っていた慶舎に
思ったより手こずったが、ギリギリの時間の中で
信は慶舎を討つ。
劉冬を討つ
もう一つ大きかったのは羌瘣の活躍。
集落で助けられた羌瘣は、
まだ傷が治りきらないまま戻ってくる。
敵陣に忍び込んで劉冬を討つ事には
失敗したが、その劉冬と再び戦場で
相対する羌瘣。
羌瘣隊が敵を食い止める事で
信が慶舎を討ちに行けるという場面。
何としても離眼を守るという信念で
向かってくる劉冬を、ついに倒す事が
出来た羌瘣。
死ぬ間際の劉冬に
口約束だが離眼で起きたような事は
ここでは起こさせないと告げて
離眼の守り子を返す場面は印象的。
自分が集落で助けられた時、
離眼の悲劇の話を聞いていた羌瘣は
劉冬が最後まで
「離眼へは行かせぬ」という執念を見せる
意味が分かっていた。
この戦いで傷が開き、呼吸がつきかけていた
羌瘣を信が助ける。
紀彗の右腕であり、敵軍の主戦力の一人を
討った事は秦国側にとって大な働き。
飛信隊の絆
桓騎軍のやり方
集落を襲って兵士でもない住人を大量に
殺し、その死体を荷車に積み上げていた
桓騎軍。
それを飛信隊が見つける。
こういう事を許せない信は怒りを露にする。
その隣で、殺された者の遺体の山の中に
自分を助けてくれた集落の長の姿があるのを
見つけた羌瘣。
これを見て、殺したのが桓騎軍の兵だと知って
激昂した羌瘣は、そこに居た桓騎軍の兵を
次々に斬り捨てる。
最後に残った二人の兵が、
皆が一瞬にして斬られてしまった事に恐れをなし
桓騎将軍の命令でやった事だと白状してしまう。
仲間割れ
信と羌瘣が桓騎のところに行ってしまった。
貂は、最悪飛信隊と桓騎軍の間で戦争になる
可能性まで考えて、散っている隊員達を集める。
信と雷土の間で殴り合いになり、
羌瘣が桓騎に剣を突き付けて虐殺を止めるよう迫る。
信が慶舎を討った事を告げても状況は変わらず、
桓騎は飛信隊の田有の首をはねろと
近くにいた配下の者に命じた。
どちらも引っ込みがつかない状況。
尾平が割って入った事で何とか
最悪の結果にはならずに済んだが・・・
尾平が桓騎軍の兵からもらった高価な装飾品を
隠し持っていた事を、信と羌瘣は許せなかった。
虐殺があった場所で略奪された物と思われるので。
信は尾平に、二度と戻ってくるなと告げる。
信の目指すもの
一旦は、もう村に帰って畑仕事でもしようと
思っていた尾平。
自分は信や羌瘣のように並外れた武の力が
あるわけでなく、それでも頑張ってついてきて
出ていけと言われるならもういいと思っていた。
しかし、
桓騎軍の兵士達が信の事を悪く言うのを聞いた時
自分の本当の気持がわかった。
尾平は飛信隊に戻り、
田有も傷を負ったが命を落とさずに済んだ。
信は、自分がどんな将軍を目指しているか
飛信隊がどうあってほしいのかを皆に語る。
漂と二人で夢見た天下の大将軍の姿が
やはり信の原点になっている。
桓騎の奇策
ただの虐殺にしか見えなかった桓騎の行動。
実はここに初めから目的があった。
苦労して取った丘を趙軍に明け渡した時も
その先の計画が頭にあったからだった。
桓騎は標的を紀彗に移した。
結果的にこの後、戦は急速に終わりに、
秦国勝利へとつながる。
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