二次創作小説第10話

二次創作小説

この話だけだと何のことか分からないと思います。
1話の前に設定や内容について書いてるので、
読んでいただいてもし興味あればどうぞ。

追跡 宇随天元

前を走っている黒いワゴン車の姿が見えた。
さっき聞いていた、病院から出て行った怪しい車の特徴と一致する。
「距離を詰めるぞ!」
煉獄が、一気にスピードを上げた。
カーブの多い道なので、乗っている方はかなり恐ろしい。
少しでもハンドル操作を誤れば崖下に真っ逆さまだ。
俺は、揺れる車内でスマホを取り出して、例の車を発見し追跡中と一斉送信で伝えた。
ここまでくれば、全員でこっちに向かう必要はない。
連れ去られた者達が、あの車に乗せられているかどうかもわからない。
病院の地下かもしれないし、そこで行われている事も見当が付いているなら、何人かはそちらに向かうべきだとも思う。
ここは俺達だけで対処するのがベストだろう。

ついに、もう少しで追いつくという距離まで迫った。
その時、前の車の助手席側から何か大きな物が投げ落とされた。
え?!人間の体?!死体??!!
煉獄は急ブレーキを踏んだ。
その反動で後部座席に居る2人は、つんのめって前の座席の背もたれに頭をぶつけたようだ。
「わぁー!」とか「ぎゃー!」とか悲鳴が上がった。
「びっくりしたぁー!どうしたんですか?!」
答えるより先に煉獄と俺は、車の外に出ていた。
車から投げ出された物を確認すると、生きた人間でも死体でもなかった。
「人形か」
「機能を停止したアンドロイドかもね」
竈門と我妻も出てきた。
「何これ気持ち悪い」
かなりリアルにできている若い女性の体だった。
ばっさりと顔にかかった長い髪の間から、無表情で目を見開いている様子は人形とわかってもちょっと不気味だ。
俺はそれを引きずって、道の端に退けた。
人間程度の重さもある。

「先を急ごう。また引き離された」
「一本道だからすぐ追いつくでしょ」
「さっきは人かもしれないと焦ったが。また同じ物を投げてきたら今度は強行突破だ」
「今度はほんとに人だったらどうするのよ」
「まさか・・・」
「あいつらならやるかも」
「そうだな。慎重に行く。ありがとう。宇髄」

スピードを上げて追いかけ、再び黒いワゴン車の姿が視界に入った。
この先は少しだけ直線の道になる。
「側面につけてもらえたら俺が飛び移ります」
竈門は大胆な事を言い出した。
「無茶すんなって。撃たれたら終わりでしょ」
「もし銃を持っているなら、さっきのような妨害の仕方はせずに銃を使っていたと思います。それに・・・これは俺のカンですが、あの車の中に連れ去られた皆んなが居ると思うんです。何としても助けないと」
「竈門少年は今でも嗅覚でそんな事がわかるのか?」
「前世ほどではありませんが、普通の人よりは嗅覚は敏感だと思います」

「危ない!伏せろ!」
俺と煉獄が同時に気が付いた。
直線の道に入ってスピードを上げた時、前を走るワゴン車の天井が開いて、こちらに弓を向ける者の姿が見えた。
ボウガンかクロスボウか・・・
飛び出した矢は外れて、こちらの車の屋根を飛び越えていった。
近かったから、もしかしたら天井を掠ったかもしれない。
その後も続けて数本、矢が飛んできた。
これも全て外れて車の上や横を抜けていった。

「えーっ!!!撃ってきてる?!いやあああああ」
「大丈夫だ。善逸。あの距離からではそう簡単に当たらない」
「しかし近づくわけにはいかなくなったな。距離を保ちながら見失わないようについていくしかない」
「あちらさんが決めた場所まで誘き出すつもりかもしれないけど・・・
ん?あれって・・・」
「人が居るのか?」
前の車が走るさらに先、走っている数人の人の姿が見えた。
「竈門。お前のカン当たったかもな。あれってもしかして・・・」
「子供達か?!急ごう」
「また撃ってくるぞ!頭引っ込めてろよ!」
俺は後部座席の二人に向かって叫んだ。


皆を守って逃げ切る 不死川玄弥

勢いよく飛んで来た矢が、顔の横を掠めて近くの木に突き刺さった。
さっきから何度も。
際どいところでわざと外してるのかもしれない。
使っているのはボウガンか何かか・・・
一見普通のワゴン車に見えたのに、実は戦闘用の作りというやつか。
車の屋根を開けて、上から狙って撃ってきている。
心臓を射抜かれれば致命症になる。
俺たちの中の誰かが死んでしまっては人質として使えないし、子供達が死ねばアドレノクロムも取れなくなる。
わざと追いかけ回して脅し、極限までの恐怖感を与えてから、もう一度捕まえるつもりかと思う。

ギリギリのところを矢が掠めて飛ぶのは、俺だって平気ではない。
子供達は皆んな泣き叫んでいるし、千寿郎は、泣き叫びこそしないものの真っ青になっている。
竈門の妹は、一番に泣き叫ぶかと思えば落ち着いて子供達を励ましていて、女の割にはかなり気丈だと思う。
「・・痛っ・・」
「禰豆子さん!大丈夫ですか?!」
「平気。掠っただけだから」
鋭い矢の先が左腕を掠ったようで、半袖の白いTシャツが血で染まっている。
「上へ行け!車では細い道は上がれない」
俺は、全員に向かって叫んだ。
「禰豆子さん!そこまで走って!後で止血します」
千寿郎が、子供達に気をつけながら山の上の方に向かう細い道に誘導する。
その間も、次々と矢は飛んで来たけれど、さっきより大きく外れているところを見ると狙い切れてないのかもしれない。
わざわざ険しい細い道を上るのは、奴らにとって想定外なのか・・・

大きな木が重なって陰になった場所で、とりあえず全員隠れた。
奴らは車を降りて追ってくるかもしれないし、奴らの他にも山の中に誰か潜んでいるのかもしれないけれど。

怪我をしたのは今のところ一人だけだ。
千寿郎がハンカチを取り出して止血してくれている。
俺は、敵が来ないか周りを警戒しつつ、武器になる物を探した。
太めの木の枝でも何でも無いよりはマシだろう。
子供達は、怯えてはいるけれど全員無事だ。

今はまだ静かだが、奴らが諦めるわけはない。
それとも、兄ちゃんや他の教師達を誘き出せるまで、わざと待っているのか。


地下への突入 悲鳴嶼行冥

「追わなくていいんですか?」
「天元から連絡が来たからね。任せよう。向こうにも柱だった二人を含め四人行っている。私達全員をあちらへ向かわせるのが彼らの作戦だろうから。それには乗らないよ。あと二人、向こうの応援に行ってもらったから大丈夫だと思うよ」
理事長は、ワゴン車を追うのは宇髄や煉獄達に任せたようだ。

不死川、富岡に合流する予定だった時透と嘴平に連絡し、行き先を変えさせてワゴン車を追う方に向かわせたと言う。
時透は幼いとはいえ、前世鬼殺隊の柱だった人間だ。
頼りになると思う。
嘴平も前世鬼殺隊士としてよく戦ったし、前世の境遇からすると山道には詳しいかもしれない。

向こうの事は任せて、こっちの六人は病院の地下で行われている事を暴きに行く。
近くまで来るのに使った車はここに置いて、今から徒歩で向かう。

病院の大きな建物の裏側は、通路が複雑に入り組んでいて大小様々な建物が密集して建っている。
近づくにはそれが幸いして、他の建物の陰から向こうを見ることができる。
「入り口はたしかこの辺りだ。やはり見張りが居るな」
ここまで道案内してくれた伊黒が言った。

以前から調べていて、やっと地下への入り口を見つけたのが、つい最近だったらしい。
表から突入するわけにはいかないから、この入り口を見つける事は本当に重要だった。
ここで働いているほとんどの職員、医師や看護師達は、自分達の勤務先の地下で何が行われているか知らないだろうし、実際ここは普通の病院としても機能している。
今も当直の医師や看護師、その他職員、入院患者らが居るはずだから、出来る限り巻き込みたくない。

「見張りは四人のようですね」
通行人のふりをして様子を見に行った冨岡が、理事長に報告した。
「理事長。全員で中に突入するんですか?」
ここに見張りを残さなくていいのか気になって、私は聞いてみた。
「私達が残ろうか。こちらから出口を塞がれてしまった場合出られなくなるからね」
「わかりました」
「四人で行ってくれるかな」
理事長の問いに、四人全員がすぐに承知しましたと応じた。
冨岡、不死川、伊黒、甘露寺が地下へ向かうことになる。

私達の姿が見えた時点で、地下への入り口を見張ってた連中は警戒してこちらに注意を向けた。
ここは普段、夜にはほとんど人が通らない場所で、実際今も私達以外に通行人の姿は見えない。
好都合だ。誰も巻き込まなくていい。

私達六人がゆっくり近づいて行くと、何もしていないうちから相手が襲いかかってきた。
こんなところに集団で近づく人間は、普通に通りかかっただけというのはありえない。どうせ最初から目的はバレている。

先頭に居た私が、襲いかかってくる相手に向けて催涙スプレーを噴射した。四人全員に命中。
それでも相手は向かってくる。戦闘用アンドロイドだ。

私は、すぐ出せるように鞄に隠していた鉄球を使って、最初の相手を打ち倒した。
理事長が、次に襲ってきた相手をスタンガンで倒す。
傘に見せかけて持っている長さのあるスタンガンは、先端に尖った短い切先がある。
ここから流れる強力な電流で、アンドロイドは機能を麻痺させられ倒れた。
普通の人間に、この強さの電流を流せば命に関わる。
相手が全員人間ではないとわかれば、容赦なく戦える。

ここは大丈夫と見た四人は、あと二体と対峙している私達の横をすり抜けて入り口へ向かう。
それを追うそぶりを見せた二体を、私と理事長で仕留めた。
しかし息を吐く間もなく、最初に倒した二体が再び起き上がって襲っくる。
うち一体は鉄球の攻撃で体を半壊させながら、それでも向かってくる。
頭部を狙ってもう一度鉄球を叩きつけた。
理事長は、もう一度スタンガンで倒した相手をさらに鉄パイプで破壊していた。

前世と違って普通の体力を持っていて年齢もまだ若い理事長は、武器を持てば十分に戦えるらしい。
私達は、倒しても倒しても起き上がって襲ってくるアンドロイドに対して、相手が再生不可能なほどバラバラになるまで容赦なく攻撃し続けた。
ゴムで作られた表面の皮膚が裂けて、壊れた機械が中から飛び出している。
時間にしてみればおそらく数分。けれどこちらも消耗が激しく、やっと四体全て倒した時にはヘトヘトになって息が上がっていた。
幸い理事長も私も怪我は無かった。

「今のところ増援は来ないようだね。けれどまだ安心は出来ないからここで待とう」
「車を取ってきましょうか」
「そうだね。あの子達が戻ってきたらすぐに離脱できる方がいい」
「もう一台の車はキーも預かっています」
「では私がここで見張っているから、先に一台取ってきてくれるかな」
「わかりました」
私は、不死川から預かった鍵を取り出して車を止めた場所へ向かう。
不死川は煉獄家の車を一台借りてきたらしい。

車を取ってきて私が戻ると、今度は理事長がもう一台の車を取りに行くために離れた。
私はここで入り口を見張っているが、今のところ誰もまだ出て来ない。


隠し部屋に突入する 甘露寺蜜璃

地下への入り口が見つけられ突破されたことは、おそらく相手側に知られていると思う。
入り口を見張る戦闘用アンドロイドが破壊されれば、自動的に知らせが行っているはず。そのくらいのシステムは、きっと備えているだろうから。

一人ずつしか通れないような幅の狭い階段を、不死川さんを先頭に一列になって降りて行く。
階段を降り切った所は、階段より少し幅のある数メートルの長さの廊下だった。その向こうにドアがある。

「ここに見張りがいねぇってのが、かえって不自然なんだよなァ」
「廊下を普通に進むと危険だと思う。人が通ったら発動するような仕掛けがあるかもしれない」
不死川さんも冨岡さんも、何か思うところがあるみたい。
言われてみればたしかに。
仕掛けがあるかどうか、何かで試せないか・・・

「私の鞄が多分一番重さがあると思うから投げてみて」
「鞄が犠牲になるかもしれねぇぞォ」
「かまわないから」
私は、背負っていたバックパックを差し出した。
不死川さんが受け取り、1メートルほど先の廊下に向かってそれを放り投げた。

バックパックが床に落ちた瞬間、廊下の両側の壁から、何本もの回転する金属の棒が飛び出した。
「あれの横や先端に付いているのはおそらく刃物だ」
私の後ろで見ていた伊黒さんが言った。
たしかに見た感じそういう風に見える。

もし何も疑わず普通に歩いて行っていたら、避ける事は不可能だったと思う。
串刺しになる事は間違いない。
冷たい汗が背中を伝う。

自分が串刺しになるところを想像してしまい、ゴクリと生唾を飲み込んだ私の肩に、伊黒さんが優しく手をおいてくれる。
「大丈夫だ。甘露寺。仕掛けの構造はわかった」
「そうなの?」
「おそらく攻撃は側面からのみ。バックパックが何ともないところを見ても、床からの攻撃は無い。床に人の体重がかかれば感知して反応する」

なるほど。言われればたしかにだけど、瞬時に分かる伊黒さんは凄い。
「一番下の回転刃の位置が、目測で床から50センチ位だなァ」
「すり抜けられる程度だな」
壁の仕掛けが出てきた時、私はびっくりして一瞬固まったけど、皆んなよく見ている。
回転刃は、一度出てきた後ゆっくり壁の中に吸い込まれていった。

「一発目が来た後、次までには間があいている。この間に走り抜けられなくもない」
伊黒さんが言って、皆が頷いた。
不死川さんが、武器の先端を鍵状の物に付け替えてバックパックをゆっくり引き寄せた。
すると再び回転刃が壁から飛び出す。
床にかかる重さの移動でも、回転刃の仕掛けは発動するらしい。

「回転刃が出たり引っ込んだりする下を匍匐前進で進むか、刃が引っ込んだ瞬間に走り抜けるかですね」
「そうだな。甘露寺。悪いがもう一度バックパックを使わせてくれ」
伊黒さんが言った。
「はい。何度でも」
「不死川。もう一度投げてみてくれ。回転刃が引っ込んでいる時間の長さを見たい」

不死川さんが、もう一度バックパックを床に投げると壁から回転刃が飛び出した。
引く時は回転の速度が弱まり、ゆっくり。
その間はバックパックを引き寄せても無反応。
回転刃が完全に壁の中に消えてから、もう一度バックパックを投げると再び飛び出す。
「5秒以上あるな。走り抜けるぞ」

バックパックを投げて回転刃が飛び出し、引いていった瞬間を狙って四人一斉に走り出した。
全員が走り抜けた後に、振り返ると回転刃が再び飛び出していた。
こちら側の壁側を見ると、おそらくこれが装置を止めるボタンなのではと思えるスイッチがあった。

ここに出入りしている者達は常に居るわけだから、自分達が安全に出入りできるように、使いやすい場所にスイッチを置いているはずだと思う。
外から入る場合は、何か中に居る者に連絡してスイッチを切ってもらう手段があるのかもしれない。

廊下を渡り切った目の前には扉。
「鍵かかってんだろうなァ。多分」
「俺達がここまで来たのも監視カメラか何かで見られているかもしれない」
「もし開いてたら敵が急に出てくるからなァ。どいてろォ」

私達は扉の両サイドの壁に体を押し付け、不死川さんがドアノブに手をかけて一気に引いた。
引きながら自分の体を扉の後ろに隠す。

中から勢いよく飛び出してきた男が、廊下に向けて火炎放射器を使った。
炎が巻き上がる。
男は、壁側に体を寄せている私達を見ていない。

冨岡さんが、男の脇腹に鉄パイプで突きを入れた。
男はバランスを失って廊下側に倒れ、火炎放射器が男の手から落ちて廊下を滑る。
回転刃が飛び出して男の上半身を貫いたが、血が吹き出すことも悲鳴が上がる事もなかった。またアンドロイドか。
残っていた炎が、廊下に置いてきた私のバックパックに移って燃え上がった。
けれど廊下は燃えやすい材質ではないらしく、それ以上燃え広がる様子は無い。
不死川さんが、続いて冨岡さんが中に突入し、私と伊黒さんも続いた。


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